スコアアップのために必要なゴルフスイングの科学
スコアアップを目指すゴルファー向けのコラムです.
最近のゴルフ理論として,おおまかに【アームローテーション】と【ボディターン】の2種類に分けられますがここでは【アームローテーション】を使った,ニューオールドスクール系のスイングについての解説になります.
ライン出しやシャローイングを主に用いる【ボディターン】のスイングはまた別で解説する機会を作ります.
技術的な要素は80後半までが目安.
前半はゴルフ初心者のために,80台を目指すゴルファーにもスイングの見直しにおすすめです!
飛距離を伸ばすためのパワーの作り方は↓を読んでください.
野球経験者ででスライスに悩む方は↓が参考になります.
最短最速の上達ために必要な意識
・グリップはストロング
・左手首の掌屈と右手首の背屈
・ダウンスイングは肩関節外旋を維持
・骨盤と上部体幹の捻転差
・アドレスとインパクトでは体とボールの位置関係は全く別
以上を意識する事がゴルフの上達を最速・最短にしてくれる原則になります.
重心の位置や膝の動きを言うことがありますが,それは上の原則の形を作りやすくしているに過ぎません.
重心の位置のや膝の動きが少々違ってもスイングは成立します.
プロゴルファーでも様々なスイングがあるのはそのためです.
以下は詳細の解説になります.
グリップ クラブの握り方
スイング1つとっても様々ですが,まずはグリップ
握り方はそれぞれありますので自身が合う握り方が大事です.
ただ原則やプロはどのようなグリップかは知っておいた方が上達が早いと思います.
個人的な好みとしてはインターロックですね.
一時は好きなプロ選手のマネをしてオーバーラップでしたが,安定するのはロックでした.
グリップの時に一番間違いやすいのは野球バットを握るように『手のひらで握ってしまう事』です.
図の右下を参考にして【指】で握るイメージにしましょう.
ニュートラル?ストロングか?ウィークか?
hackmotion.comによるツアープロとアマチュアでリード側(右打ちにとって左手)の手首の角度を比較した興味深いデータがあります.
プロはスイング全体を通して手首が背屈(甲側に曲がる)していますが,ダウンスイングからインパクトにかけては手首がやや掌屈(手のひら側に曲がる)しています.
しかしアマチュアはアドレス時に背屈角度が小さく,バックスイング,トップ→ダウンスイング途中まで極端に手首が背屈するというデータがあります.
このグラフから考えると,プロはストロングでグリップし,その手首の角度を維持している事が確認出来ます.
Martin Hallも『フェースに対して左手の甲が90°になっている状態でグリップするのが良い』と話しています.
アマチュアはダウンスイングで急激に背屈角度が増加します.
ダウンスイング中に左手首が背屈するとクラブフェイスは開き,軌道もアウトサイドインになりやすいためスライスになる一つの因子となります.
グラフの【スイング中の手関節背屈角度】についてはとても良い知見だと思います.
私自身この意識でグリップを変えたところミスショットが減りました.
クラブのフェース面をボールに合わせた時に,左手の甲が体の正面を向くくらい左手は内側に捻る(前腕を回内する)とショットは安定しやすいようです.
また,左手の親指は指紋がしっかりグリップに付くように握り,右手の親指は少し内側にずらすようにすると良いグリップになります.
ただし個人差もあり,2020年MastersタイトルのD.Jhonson選手や2021年USオープンタイトルのC.Morikawa選手はウィークにグリップしトップの位置から手首は掌屈しています.
下の写真はマスターズ2020年と2021年の優勝者を比較しています.
同じトップでの切り返しのタイミングですが手首の曲がっている角度は双方で違いがあります.
これは上述したアームローテーションかボディターンかのスイングの種類も関係します.
手首の使い方にもある程度バリエーションがあるため,自分に合うスイングを知る事も良いでしょう.
グリップを変えると最初は頼り無くてグラグラすると思います.
この理由は
①慣れない事
②手首の角度(撓屈・尺屈)
が考えられます.
①についてはスイングを続ける事で解消出来ます.慣れることも必要です.
②については初心者によく見られますが,腕とクラブに角度が付いてない状態です.
腕の黄線とクラブの赤線の
角度が小さく直線に近い
黄線と赤線に角度がある
身長やクラブによっても差がありますが,『手首を立てる』状態を保つ必要があります.
この手首を意識するとグリップのグラグラ感もなくなりスイング軌道も安定します.
また,手首の角度が小さいとクラブのグリップが身体の近くを通れないので横振りになりやすく,前腕を回内外する力が充分に使えないので飛距離も小さくなります.
ただし,これも個人差があり飛ばし屋の DeChambeau選手のドライバーアドレスではこの手首の撓尺屈角度はとても小さいです.
スイングプレーンについて
スイングプレーンとは,クラブが通る【面】の事を言います.
一般的にはこれが安定しないとボールの飛ぶ方向も安定しません.
上図における緑の線で表される面をスイングプレーンと考えてください.
この面も身長やクラブの種類・個人差がありますが,プレーンの傾きや方向でもボールの飛球方向と曲がりに影響が出ます.
スイングプレーンの向きと飛球の関係
赤い線がスイングプレーンをアドレスした所から観た状態です.身体の軸に対して真っ直ぐなプレーンをイメージしています.
クラブヘッドの軌道を【赤線】で,ボールの飛球線を【青】で表しています.
(*必ずプレーンはこの軌道にならず,飛球線も条件によってはわずかにズレますが,便宜上のものとしてください.)
上の図のようにプレーンの一番先端(正面)でボールをとらえた場合,ボールはその接線の方向に真っ直ぐ打ち出され曲がらずストレートに飛びます.
上図のようにスイングプレーンが左を向くと,体の遠くからヘッドが降りてきて近くを抜けていく,アウトサイドインの軌道になります.
引っかけやスライスの弾道になりやすい軌道です.
反対にスイングプレーンが右を向くと,体の近くにヘッドが降りてきて遠くに抜けていく,インサイドアウトの軌道になります.
プッシュやドローの弾道になりやすい軌道になります.
上述したようにどちらのスイングプレーンが向いていようが,クラブフェイスが接線に対して垂直であればフェイスが向いている方向にボールは飛び出し曲がることなく飛球します.
クラブフェイスの向きとクラブの軌道と飛球の性質
クラブフェイスの向きとクラブの軌道によっては飛球方向とボールの曲がりが決定します.
Trackmanでの解析結果から考察します.
通常クラブフェイスの向きにボールは飛び出します.フェイスの向きよりインサイド・アウトにスイングすればドローになり,アウトサイドインであればフェードの曲がりになります.
【曲がる方向と量】についてはフェイスの向きとスイング軌道の関係によります.Trackmanでいうところの,【フェイストゥパス】が曲がりを決定すると言えます.
ただし,フェイスの向きもスイングの軌道もお互いを修飾する作用があります.インサイドアウトの軌道であればフェイスの向きよりやや左に飛び出しますし,アウトサイドインであればやや右側に飛び出すことになります.
原則としてフェイスが向いた角度にボールは飛球します.わずかな方向の誤差はフェイストゥパスの影響を受けると考えられます.
上図はボールの曲がりを決定するフェイストゥパスを表したものです.
点線に沿った青い矢印がクラブパスでスイングしたときのクラブヘッドの軌道を表現しています.
赤い矢印はフェイスの向きを表しています.
この青矢印と赤矢印の角度の差が【フェイトゥパス】になります.
フェイストゥパスがクラブ軌道より左側だとドローに右側だとフェードになります.
言い換えると,フェイスの向きよりインサイドアウトのクラブ軌道だとドローになり,アウトサイドインだとフェードになります.
スイング軌道とフェイスの向きによる球筋の原則になります.
この原則さえ分かっていれば自身の飛球を見てどのようなスイングになっているか判断する事が出来ます.
フェイスが『開く』のと『閉じる』違いで,ボールの高さや飛距離も変わりますが,スコアで言うと90台まではこの『高さ』や『飛距離』の誤差による影響はない物と考えても良いと思います.
スライスに悩む人はここをチェック
物理的に考えれば球が飛び出した方向とどちらに曲がるかを見ればその人のスイングのクセがわかります.
そうすると球筋は
- 打ち出し:左右・真ん中の3方向
- 曲がり:左右・まっすぐの3方向
この3×3の9種類のスイング軌道に分類されます
それぞれに原因があるのでこれさえ分かれば,改善すべきところが明確になりスコアは大幅に向上します.
スライスはスイングプレーンの向きやタイミングのずれで
- クラブがアウトサイドインの軌道になる事
- フェースが開く事(閉じない)が原因です.
自覚はなくても動画で撮ると自身のイメージと異なっている事もあるのでチェックしてみると良いでしょう.
特にアウトサイドインで多いのは,肩が動き出すタイミングが早く,
・コックのリリースが早くなる(キャスティング)
・ダウンスイング中のシャフトパラレル(詳細は下部)の位置が高い
・スイングプレーンが左を向く
事が原因の一つです.
最近はこのシャフトパラレルの高さに注目しています.
またフェースが開いたままになるのは腕の返しや手首の使い方に誤りがあるためです.
まず,腕の返しや手首の使い方から解説します.
↓は左手首の使い方の動画です.
インパクトゾーンで親指が下を向き,手首の甲が飛球線方向に押し出されている感覚です.
運動学的な言い方では,手関節の掌屈と尺屈が起こっています.この動きがないとほぼアウトサイドインの起動になります.
実際両手でスイングするとインパクト後はこの形になりませんが,意識としては重要な手首の使い方になります.
右腕の動きについては下の動画です.
よく『ワキを締める』といいますが,ワキを締めるだけではスイングは良くならず【肩関節の外旋】が必要です.
右肘がボールを指すような方向で,手は飛球線後方を向くような形が重要です.
右腕の動き単体で言えばボールを投げる【ピッチング】のメカニクスと同様になります.
さらにタイガー・ウッズ選手の著書や海外の著名なコーチは,『右手がボールの飛球線と握手をするようにフォローを取れ』と解説しています.
この動きを意識するとコックのリリースにもタメが出来,インパクトでもフェイスをスクエアに保ちやすいはずです.
他にバイオメカニクスから考えると,
・胸の開きが早い
・右肩関節の外旋が保たれていない
事もスライスになる原因と考えられます.
胸の開きが早いのは骨盤と上部体幹の捻転差が小さい事や手でボールを捉えようとする意識が強く,肩から先に動き出しているパターンが多いです.
骨盤と上部体幹の捻転差を意識して.【骨盤始動】⇨【肩始動】の順序を作る事が重要です.
右肩関節の外旋を保つ事は,右脇を締める動作にもつながります.トップで右脇を締めると言う動作は単に肘を体にくっ付けると言う動きではなく,手の位置は変えずに体に寄せる【肩関節外旋】の動きによって成り立ちます.
右肘がボールを指すようにして両肘が近いままダウンスイングを行うと良いでしょう.
さらにこの二つをクリアする意識としては,ダウンスイング中のシャフトパラレルの高さに気をつけましょう.
アウトサイドイン軌道のゴルファーの多くは,シャフトパラレルの位置が高くなっています.
この【シャフトパラレル】について解説します.
正式には『Club Shaft Parallel With Ground on Downswing』と言い,ゴルフスイングを10フェーズに分けた時の一つです.
クラブのシャフトが地面と平行になったタイミングになります.
3枚の画像を提示します.
タイガーウッズ選手のアイアンでは太もものほぼ中央の高さになります.
ドライバーでも股下.
これは松山選手のドライバーも同様だと観察出来ます.
このタイミングの位置を見直してみましょう.
このタイミングでのシャフトの位置を下げることで【体の開き】【肩外旋】の問題が抑えられアウトサイドイン軌道がかなり楽に修正できるはずです.
また野球出身の人でスライスが多い理由を⇨ゴルフと野球の違いは●●● スイングの同じトコロと違うトコロ!で解説していますのでこちらも参考にしてください.
野球と比較するとゴルフスイングはバットスイングとは別物で,先程述べたようにゴルフスイングの右手のメカニクスはピッチングと同様です.
小噺:インテンショナルの打ち方
クラブフェイスの軌道と向きで打ち出しの方向と曲がる方向が決まるので,意図的にドローやフェードを打ち分けたい時は,フェイスの軌道と向きを意識的にコントロールすればインテンショナルが打てるという事になります.
ツアーでの試合を観察するとドローヒッターの場合,かなり右に打ち出しているように観察出来ます.
つまり打ち出し方向にフェイスが向きさらにドローがかかるくらい大袈裟にインサイドアウトの軌道でスイングしていると言う事になります.
まず練習するときは大袈裟を意識してみましょう.
ゴルフスイングにおける体幹と骨盤の捻転差
次は【身体の捻れ】です.
ゴルフスイングでは, テイクバックの時に胸が飛球線後方を向き,フォローでは胸が飛球線上を向きます.
スイング全体で通して観ると,胸は後ろ側を向いてから飛球線上を向くので180°動く事になります.
その動きが出来ないと肘をしっかり伸ばしてスイングする事が出来ないため,腕だけで振るスイングに見えたり,スイングが安定せずミスショットが多くなります.
胸の向きを意識して骨盤からしっかり回転させましょう.
ただしこの時に注意すべきが,骨盤と胸の向きの【捻れ】です.
スイングの途中,骨盤と胸の向きの捻転差は55°にも至ると報告されており,この骨盤と体幹の捻転差が綺麗なクラブパスを導きます
体幹がしっかり回転しないと,
左肘が曲がりキレイなスイングが出来ない.
ゴルフを始めたばかりの人は上のように腕と体の方向が一緒になっており,体の捻転差を使ったスイングがなかなか出来ません.
テイクバックしてトップを作ったら,まずは骨盤だけを回して体幹上部や腕は後から着いて来るような意識を始めのうちから作っておくと上達が早いです.
大げさに言えば,骨盤をとにかく先に横回転させる事を意識すると良いと思います.
上部体幹と骨盤との捻転差が小さい事が,肩が動き出すタイミングを早くさせ,クラブヘッドをアウトから引く事になり,アウトサイドイン軌道を誘発してチーピンやスライスの原因になると言えます.
骨盤と体幹の捻転差
— 鈴木7@リハビリ+鍼灸+トレーナーの人+農家 (@y_seven_s) February 14, 2020
これがパワーを生み出す方略の一つ
捻転差はピッチングが一番大きく、ゴルフスイング➡︎バッティングと続く
バッティングが小さい理由はリアクティブな動作やからと考えて良い
股関節から骨盤での運動が先んじている事が重要
pic.twitter.com/fEtw44EHBx
このツイートでは,野球のバッターは骨盤と胸椎の捻転差が35°.
ゴルファーの捻転差は55°,野球のピッチャーは60°に至ると解説されています.
骨盤の回転を先行させて,上部胸椎との捻転差を生じる事がゴルファーに必要な事は間違いなく,中級者までのゴルファーではこの捻転差が不十分な場合がほとんどです.
ゴルフのスウェイについて
ゴルフではスウェイが良くないと言われます.
果たしてスウェイの何がいけないのか?
様々なレベルのゴルファーのスイングを解析したGolftec(https://www.golftec.com/swingtru) によると,初級者からプロへのレベルの上昇に伴ってスウェイの量と相関があるようです.
これはトップの切り返しでのスウェイ量を見たものですが,下のようにインパクトのタイミングでも同様の相関が認められています.
この結果を見るならば積極的にスウェイさせ,骨盤と体幹の捻転差を生み出す事が上達への近道と言えるでしょう.
この動きは投球フォームやバッティングにおける【ヒップファースト】に通じる部分がありますので,スイングとしては正しいメカニクスと考えて良いと思います.
おそらくスウェイする方向や体幹との位置関係にズレが生じる事がNGとなったのかもしれません.
スウェイは絶対悪ではないと考えるのが妥当でしょう.スイングはそれぞれの個にあった物が大切ですのでスウェイした方が安定するのであれば問題ありません.
ゴルフのヘッドアップについて
ゴルフのヘッドアップについて考察します.
【ヘッドアップ】については2種類の意味で捉えられていると思います.
ひとつは『インパクトで顔が飛球線上を向いてしまう』こと,
もうひとつは『インパクト時に体が伸び上がり頭の位置が高くなってしまう』ことです.
このふたつの動きは,インパクトでボールを見切る事になりミートが悪くなったり,体が伸び上がりトップしたりするので抑制するようアドバイスされることが多いです.
しかし,LPGAツアー72勝を収めたアニカ・ソレンスタム選手は,インパクトと同時に伸び上がるようになり目線も早いタイミングから飛球線上に向きます.
この動きは一般的なゴルフスイングにおけるメカニクスとはかけ離れているようですが,パフォーマンスは良いのです.
上の写真でも分かる通りインパクトの手前の時点で顔が飛球線方向に向き始めています.
手首の動きでも述べましたが,その人に合ったスイングもあります.
たとえヘッドアップしたとしても,飛球がイメージ通りであれば修正する必要はないと考えます.
ではヘッドアップを治したいときはどのような方略が良いでしょう?
顔が飛球線に向いてしまう場合と体が伸び上がってしまう場合に分けて考えてみます.
まず顔が飛球線に向いてしまう場合ですが,よく『ボールの行き先を見たいから』という理由付をされますが実際はそうではないでしょう.
もちろんその理由がゼロではありません.しかしバイオメカニクス上の理由のほうが影響は大きいです.
このコラムを読んでいる【今】,胸を左90°に向けてみましょう.
一瞬でも顔も左に向いた人がたくさんいるはずです.
人の首の動きは,首より上の動きでは独立して動きやすいですが,土台となる胴体が動くと頭・頸部が分離されず胸の向いた方向に顔も向きやすくなります.
今見ている【画面】に注意があったとしても自ずと胸の向いた方向につられてしまう訳です.
これはゴルフのときも同様で,インパクト時点で胸はボールより飛球線上の先を向くのでその動きに顔もつられてヘッドアップしてしまう,というのが正しい理由付です.
なので例えボールを見続ける意識があったとしてもヘッドアップはしやすいのです.
この場合のヘッドアップを治すには,意識的に胸が回転する方向と反対に顔を向ける意識が必要です.
具体的な例えでは,右利きであれば『意識的に顔を右に向ける』ことや『顎を右肩にぶつける意識』,『胸を飛球線後方に向けたままスイングする』があります.
はじめは違和感が強いですが繰り返すことで徐々に飛球線に顔が向いてしまうクセが治ります.
次は体が伸び上がったヘッドアップです.
アーリーエクステンションと呼ばれるミスです.
アドレスで曲がっている膝をインパクトにかけて鋭く伸ばすため,バイオメカニクスとして体はどうしても伸びやすくなります.
体を前傾させる意識だけではほとんどの人は頭部の位置を低く保てないでしょう.
飛球線後方から自身のスイングを確認すると良いですが,膝が伸びる瞬間に骨盤がボールの方向へ移動しているはずです.
結果として支持基底面内に重心を置くために体が伸び上がるようになります.
この理由で伸び上がる場合,左股関節の位置を意識しましょう.
左股関節を左後ろに引くイメージで骨盤の横回転を行うと体幹の前傾を保ちやすく,頭部の位置を低く保持出来るはずです,
この体の伸び上がりはスイングプレーンのズレにも影響します.
ヘッドアップとスイングプレーンの安定
スイングプレーンの話に戻しましょう.ここまで説明したようにスイングプレーンとクラブフェイスの向きさえコントロール出来ればボールを飛ぶ方向もコントロール出来ます.
ですが,スイングプレーンが乱れるとクラブヘッドとボールの位置関係もずれるのでミスショットが増えます.
プレーンを安定させる事がとても大事なのです.
では,スイングプレーンは何が影響しているのでしょう.
プレーンのコントロールには身体の軸が影響します.
軸は3次元で決定されるのでパターンは無数にありますが,身体の前後の動きと横の動きを考えます.
スイングにおける軸の前後のズレです.
アドレス⇒テイクバック までは軸が安定しています.
インパクトになると身体が起き上がり軸が垂直に近くなっているのが分かります.
さらにWoods選手のスイングから考察します.
連続写真ですが,アドレスでは膝は少し曲がっているのに対してインパクトの時は左膝がほぼ真っ直ぐに伸びています.
この時に頭の位置を一定に保つためには体の前傾はアドレス時よりさらに深くする必要があります.
事実この写真では6°程度前傾が深くなっています.
骨盤の横回転と体幹の回旋でズレが生じているので前傾を保つためには体幹の側屈の運動成分も必要です.
体が起き上がり前傾が保てず,スイング軸が垂直に近くなると基本的にはスイングプレーンは水平に近づきます.
プレーンが横に近くなると水平軸で軌道を観た時,円弧のRが強くなるためインパクトのタイミングが合わない時にボールの左右のズレが大きくなります.
強調してありますが,インパクトが少しズレた時のイメージです.
赤線がプレーンが水平に近くなった時,緑はプレーンが保てている時です.
それぞれのクラブヘッドの軌道の水平成分を観察しています.
クラブ軌道が水平に近くなると赤線のように円弧のRが小さく正円に近いため,同じタイミングのズレでも飛び出す方向のズレが大きくなっています.
軸の左右や向いている方向にも影響を受けます.
左:スライスかチーピンが多い
— 鈴木セブン@痛みとスポーツが得意な理学療法士×農家 (@y_seven_s) January 28, 2020
右:修正後
後ろ側の肘が降りずにアウトサイドインの軌道
ボールをつかまえようとするとクラブが先に降りてさらにプルサイドに飛ぶ
・後ろ側の肘は股関節の近くを通る
・クラブは後から出てくる
感覚が良い#ゴルフ#Golf
pic.twitter.com/FiWIFnqH85
クラブフェイスのコントロールには
クラブフェイスのコントロールは前腕の回内外が影響します.
かなり厳密なタイミングと細やかなコントロールが必要になり,ゴルフスイングの中ではかなりマイクロな部分です.
タイガー・ウッズ選手もスイング毎に手の小さな筋の働きが異なるというデータがあり,スイング途中に微調整しているという事です.
加筆中・・・
ゴルフスイングでマクロに意識する事
体幹の前傾角度
まずスイング全体で意識するのは【身体の前傾角度】です.
股関節で曲げる事を意識して背中はなるべく伸ばした状態で前傾します.
スイング途中,
- テイクバック
- ダウンスイング
- インパクト
どのタイミングでも身体が起き上がってしまう事が多いです.
スイングのプレーンが安定しないので球筋も安定しません.
タイガーウッズ選手のスイングをもう一度確認します.
アドレス時より体幹の前傾角度は深くなっていることが分かります.
飛距離を伸ばすスイングのパワーアップ
ここからはスイングの加速,ボールを飛ばす事について少しだけ解説します.
飛距離を伸ばすための体の使い方についてはこちら→スイング系のスポーツで飛距離を伸ばす方法 を参考にしてください.
基本的にボールを飛ばすパワーは,
- 股関節の回旋
- 胸腰椎の回旋
- 肩関節の内外転・回旋
- 前腕の回内外
で生まれると考えられます.
どこから動き出す事が力を生み出せるかと言うと,右の股関節からです.
この動き出しは右の股関節筋群の作用に右足の踏ん張った反作用を使ったものですが,右の股関節の動き出しに右膝がついてきます.
パワーによる飛距離アップの一番の近道は股関節の回旋のトレーニングをする事です.
さらにその力の使い方をスイングに落とし込む必要があります.
イメージの仕方は人それぞれですので,同じように伝えるのは難しいですが,下の図のように右膝の後ろに【壁】があると仮定して,その壁を右膝で押すイメージが良いと思います.
『膝を真横に』と言うよりは,『股関節を開く』ようにして押すイメージです.
そうすると骨盤の左回転が生まれるのでヘッドスピードの向上に繋がります.
右の股関節が動くと言うことは骨盤の回転も始まっていますが,回転が始まった瞬間は手の位置(グラブ)は動き出していません.
上のTwitterの動画を見直してみてください.
このクラブの遅れが,骨盤と胸椎の捻りの差が大きな力を生みだし,理想的なクラブヘッドの軌道となります.
↓フィル・ミケルソン選手のスイングです.
左右は逆ですが股関節から動きだして膝がついてくるのが分かります.
骨盤がしっかり飛球線上に向いてからグラブが追い付いてくるのですが,ここからのフェイズで大事なのは左の股関節です.
よく左脚で壁を作るように と言われますが,あまり意識し過ぎると左の股関節が後ろに引けてしまって引っかけやスライスの原因となります
若い頃のタイガー・ウッズ選手
インパクト時点で骨盤が飛球線上を向く
メジャー9勝のベン・ホーガン選手
左膝が前にでるスイング
往年の名選手にも色んなフォームがあり,左膝が大きく動く著名な選手もいるので壁の意識はそこまで強く持たなくても良いです.
ただ大事なのは、体幹の軸をずらさずに回転が出来るかどうかです.
ゴルフスイングの変遷
ゴルフはスポーツとして長い歴史を持っています.
その中にはゴルフクラブの進化,ボールの進化,それに伴いスイングにも変化があります.
昔はドライバーなどは木製でした.その流れでヘッドが球状の飛距離の出るクラブは『ウッド』と呼ばれます.
今はチタンなど金属製が主流ですので近年,『ウッド』から『メタル』という呼ばれ方になってきています.
さらにヘッドの大きさも以前は300cc程度の大きさでしたが,今では450ccを超えるヘッドのドライバーもあります.
ヘッドが大きくなりミスヒットもある程度許容されるようになりより飛距離を出せるようにスイングもパワーを求める事が出来るようになったと言えます.
さらにアイアンでもキャビティ形状のおかげでスポットが拡大し,上から打ち込むようなスイングでなく,横から払うようなスイングでもしっかり芯にあたるようになっています.
ボールについてもスピンがかかりにくくなり,曲がりにくくなったり吹き上がりにくくなったと言われています.
クラブやボールなどギアの進化やスポーツ科学の発展によりゴルフスイングにも変遷があります.
前述したように往年の名選手であるベン・ホーガン選手や日本で有名なジャンボ尾崎選手のスイングは現代で活躍しているゴルフ選手のスイングとはまた一つ違う所があると言えるでしょう.
さらに最近ではボディターンを用いるスイングをする選手も見受けられるようになりました.
メジャー18勝のジャックニクラスのスイング
トップで左足が大きく動くスイング
ジャンボ尾崎選手や最近ではMatthew選手も同様のスイング
ベンホーガンのスイング
左膝が飛球線方向に積極的に動く
ゴルフクラブについて
おまけとしてゴルフクラブについて.
基本的にクラブは新しい物がいいですが,ゴルフを始める人にとって新品のクラブで始める方は少ないでしょう.
選べるのであればより新しい物で,
ドライバーなど【メタル】は大きめのヘッド,シャフトは人によりけりですが固過ぎず柔らか過ぎなければ大丈夫です.
反対に柔らかいものや固いもので特性を理解して振るようにすればゴルフは早く上達します.
アイアンはキャビティタイプが良いです.
スイートスポットが広めでショットが打ちやすく、ミスが出にくいのでモチベーションの維持にも良いですね!
キャビティタイプ
クラブの後ろが凹んでいる
ミスショットが出にくい
マッスルバックタイプ
クラブが平ら
操作性は良いがミスショットにはシビア
キャビティはヘッドが大きく当たって飛ぶスイートスポット(芯)が広いので,スイングが安定しない初級者でも打ちやすいのがポイントです.
マッスルバックはヘッドが小さのでスポットは小さいですが,操作性が良いためボールの方向性やボールの曲がる量をコントロールしたいゴルファーなど上級者に向くと言えます.
以前プロはほとんどマッスルバックでしたが,キャビティとマッスルバックの中間のハーフキャビティを使う選手も多くなりました.
個人的にはマッスルバックの見た目が好きです!
最後に
これからゴルフを始める方や,90を切るくらいの目標の方に向けてゴルフスイングを解説しました.
スコアを求めるのであれば,グリーン周りのアプローチやパターなど,ショートゲームの技術向上は必須です.
パターで言うと,『ホールを確認して見切ってから3秒は打たない』など統計学的な方法はありますが,感覚的な要素は経験するしかない部分もありますし,それぞれの感性で練習方法も変わってきます.
クラブをとにかく触る時間を長くすると,ボディイメージの延長としてクラブの扱いの正確性が向上するので,ショートゲームのパフォーマンスもアップすると思われます.
自分の球筋を見てスイングのクセを知る事で,スイングを治しやすいです.
自分のスイングを動画で撮って確認するのも運動学習としては良い方法です.
球筋にばらつきがある人はスイング自体が固まっていないのでもう少し練習してください!
ゴルフを楽しまれる皆さんへ,
- ボールマークは直しましょう
- 取れたターフは戻しましょう
- ディボットになるなら目土をしましょう
- 自分のパーティ以外もいる事を忘れず騒ぎ過ぎないようにしましょう
- クラブハウスでは脱帽,ジャケット着用しましょう
マナーでありルールなんですね.
みなさんが意識するとそれぞれのゴルフがまた一つ楽しくなると思います!
コメントをお書きください
英語学習ひろば管理人 (土曜日, 13 3月 2021 22:44)
突然の問い合わせ失礼いたします。
英語学習ひろばというサイトの管理人を行っている、ケントというものです。
今回、御社の
https://www.sept-kiraku.com/%E5%88%9D%E7%B4%9A%E8%80%85%E3%81%8B%E3%82%89100%E5%88%87%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0/こちらのページを拝見し、とても良い記事だと思い、問い合わせをさせていただきました。
弊社では英語を中心にサイトの運営を行っているのですが、その中の調査記事カテゴリでは、様々なジャンルの調査結果の記事を公開しております。
こちらのページ( https://hitononayami.com/golf-survey/ )では弊社独自に行った、ゴルフに関する調査結果を掲載しております。
主に、どの程度の練習でスコア100を切ることができるのか?などのアンケートを基にした調査結果を掲載しており、この調査結果を、幅広いゴルファーに届けられればと考えております。
またこのような調査結果を掲載することで、御社のページの信頼度も向上するかと思い、問い合わせさせていただきました。
引用のリンクを張っていただければ、こちらの調査結果を使用していただいて問題ありませんので、是非ご検討ください。
また、今後もこのような調査結果を掲載していく予定ですので、是非ご確認ください。( https://hitononayami.com/category/survey/ )
pt (木曜日, 06 10月 2022 19:39)
はじめまして!!
コラム面白くてコメントさせていただきました。
自分もゴルフをしていてドライバーが特に苦手なんですが、分からないところがあったので質問です。
アイアンとドライバーでボール位置が違うと思うので、インパクトの位置が変わると思うのですが、ドライバーも円の頂点で当たるイメージですか??
Sept. (土曜日, 15 10月 2022 13:15)
pt さん
コメントありがとうございます.
原則としてドライバーでも円の頂点でスクエアにインパクトすればストレートに飛球します.
但しおっしゃる通り,ボールとの位置関係やシャフトの長さなどの影響で楕円の軌道になります.
その楕円の軌道でスイングパスを飛球線方向にしようとすると,楕円を飛球線やや右方向に傾ける必要があります.
ゴルフスイングの解説などで,『胸を右に残したままスイングする』などを耳にすることがあると思いますが,この楕円を傾けることに通ずることです.
フェードで打ちたい場合は,楕円をあまり傾けず円の頂点からやや過ぎたところでインパクトする事で安定した飛球線になります.
ドライバーが苦手とのことですが,多くの場合,アーリーエクステンションやキャスティングでスイング軌道の楕円が左側へ傾くことがありますので確認頂くと良いと思います.
pt (火曜日, 18 10月 2022 17:35)
丁寧なお返事ありがとうございます!!
動画を撮って確認等は行なっていますが、アーリーエクステンションはありますね…
特にドライバーだとひどく、手元が高いことも悩みのうちの一つです。
そういった点のバイオメカニクスでの解説があれば嬉しいですし、またしっかり読ませていただきます!!