スポーツ現場でよく『腰を落とせ』という言葉を耳にします.
この言葉の危険性について解説します.
まずここでは腰を落とす目的を,【重心を低くするため】として解説します.
もし他の理由が考えられるようでしたらコメントをお願い致します.
スポーツの場面で重心を低くするのは,クイックネスにとても有用で素早く動くためには必要な条件です.
しかし,【重心を低くする】ことを『腰を落とす』と表現するとクイックネスの向上を阻害したりケガを助長したりする恐れがあります.
『腰を落とす』と『重心を低くする』の違い
具体的に両者の違いを説明します.
違いというよりは,【重心を低くする】事に【腰を落とす】事も含まれます.
腰を落とすというと多くの場合,下の図のようになります.
一方でスポーツにおける基本姿勢の【アスレティックポジション】はおおよそ下の図です.
この2つを比較すると,上(腰を落とした)図は上半身が垂直で膝が前に出て曲がった状態です.
下(重心が低い)図は上半身が前傾し股関節が後ろに引かれた状態です.
腰の位置で考えると上図の方が低い位置ですが,重心の高さにはほとんど違いはありません.
重心の低さは同じですが姿勢が変わります.
この姿勢の差がスポーツでのパフォーマンスやスポーツ障害に大きく影響します.
上図のように上半身が起きて膝が前に出た姿勢だと,抗重力の作用は膝に集中します.
大腿四頭筋や下腿三頭筋に負荷がかかりやすいのです.
オスグッドやアキレス腱などに障害を及ぼす可能性が大きくなります.
膝に作用が集中するということは,股関節への作用が小さくなるため股関節を使った体の動きが小さくなります.
股関節は加速や方向転換において非常に重要な働きをするため,腰をただ落とした姿勢では重心は低くなったと言えど,クイックネスには非効率的な姿勢になります.
さらにジャンプや着地でも膝を使う動作方略になるため,膝関節の靭帯を損傷するリスクも必然的に上昇すると言えます.
世界を代表するテニスプレイヤーのアスレティックポジションです.
まさに今から【動く】ための姿勢です.
膝はあまり曲がらずに腰の位置はあまり低くなっていません.
やはりスポーツで考えたときの『腰を落とせ』はパフォーマンスを上げるための正確な表現ではありません.
スポーツでは【重心を低く】する事が重要で,そのためには股関節をやや後方に引いて屈曲し上半身を前傾する意識が重要です.
そうすることで股関節を用いた動作方略が可能で,物理的にもバイオメカニクス的にも効率良い動作が可能となります.
一度スポーツにおける姿勢を見直してみましょう.
コメントをお書きください
バスケ (水曜日, 03 4月 2024 11:56)
バスケでディフェンスでもオフェンスでも腰を落とせと言われるのですが
それって膝に影響はありますか?
Sept. (火曜日, 30 4月 2024 15:27)
バスケ さん
コメントありがとうございます.
ブログ内の一枚目のイラストのように膝を前に出して腰を落とすと
大腿四頭筋の働きが強くなり膝への負担が大きくなります.
オスグッドやジャンパー膝を発症しやすいと言えます.