バッティング,ピッチング,ゴルフスイングの原則
ゴルフスイングは基本的に両脚が動かない状態で行います.
野球のバッティングもボックス内で,スイング中は一歩踏み出すだけの決められた範囲です.
ピッチングも同様にプレートに足を付けた状態から,一歩踏み出すフォームです.
この決められた範囲で出来るだけ大きいパワーを生み出す必要があります.
そのパワーを生み出す方法について解説します.
野球やゴルフで悩んでいる人は↓も是非
【投球全体の詳しい解説】⇒理想の投球フォームとは
【バッティングについての解説】⇒バッティングフォームの科学
【ゴルフスイングについて】⇒スコアアップのためのスイング,バッティングとゴルフスイングの違い~スライスに悩む人へ~
投球・【投げる】から球速を生むパワーの源を考える
それでは本題に.
いかにパワーを生み出すかについて【投球】を例にします.
野球と比べた時,同じ動作でもある程度自由に動ける【クリケット】での投球を観ます.
cricket
— 鈴木セブン@痛みとスポーツが得意な理学療法士×農家 (@y_seven_s) February 13, 2020
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助走を活かして,腕が伸びた状態で上から振り下ろすフォームになっているのが分かります.
助走の直線的な力をそのまま使うため水平面での回転ではなく,腕や身体の使い方は縦の運動がメインです.
この動きは陸上投擲競技の【やり投げ】も同様です.
javelin②
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javelin
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では同じ投擲競技でも,砲丸投げはどうでしょう.
shot put②
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やり投げは助走が大きく認められますが,砲丸・円盤・ハンマー投げはサークルの中で投擲を完了する必要があります.
投擲する'物'によっても違いますので一括りではありませんが,やり投げは助走による直線的なパワーをそのまま使ったフォームになります.
砲丸投げなどの投擲は円運動でパワーを生み出しています.
shot put
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カテゴリーレベルの違う動画ですが,同じ砲丸投げでも水平面での円運動がしっかりしている事が,技術的にもパフォーマンス的にも優れている事が分かります.
つまり場所やフォームが限られた状態で投球などのパワーを生み出す場合,
水平面での【回転】や【円運動】 が重要という事です.
球速や飛距離アップ!ピッチング,スイングに回転が必要なワケ
野球とクリケットの投球動作に戻ります.
野球はプレートに足を着いた状態から投球する必要があります.
クリケットは大きく助走を取って投球出来ます.
現在まで記録されている野球及びクリケットにおける球速は
- 野球:169km/h
- クリケット:161km/h
.が最速のようです.
- 野球のボールは141~148g
- クリケットは155~163g
ですので,それぞれのボールの重さの中央値を取って計算するとそれぞれの運動量は
- 野球:24565g・km/h
- クリケット:25599g・km/h
となります.
投球に置いては野球よりクリケットの方が大きな運動量を生み出している事になります.
確かに投球する事にスペースの制限が少ないので妥当かとは思われます.
しかし,その制限があってもなお,運動量の差は5%しかないという野球のピッチングにおける効率の良さが強調されます.
水平面での回転でパワーを生み出す事が理に適っていると説明出来ます.
この動きは【投球】だけでなく,バッティングやゴルフスイングでも同様と考えて良いでしょう.
骨盤と体幹の捻転差
— 鈴木セブン@痛みとスポーツが得意な理学療法士×農家 (@y_seven_s) February 14, 2020
これがパワーを生み出す方略の一つ
捻転差はピッチングが一番大きく、ゴルフスイング➡︎バッティングと続く
バッティングが小さい理由はリアクティブな動作やからと考えて良い
股関節から骨盤での運動が先んじている事が重要
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球速・飛距離アップする回転パワーの作り方
ゴルフスイングやバッティングでも同様に水平方向での回転が大きく行われています.
この回転をどう作るかが問題です.
ピッチングとバッティング【床反力】を記録した物です↓
ステップ脚が着地する寸前
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軸脚の反力は三塁側へ向いとる
投球方向へ蹴っとるイメージが強いけど
水平面での回転を作るために軸脚を使っとる
という解釈が出来る#ピッチング#メカニクスpic.twitter.com/8uVDlhpVHI
スイング中の脚が踏ん張る方向
— 鈴木セブン@痛みとスポーツが得意な理学療法士×農家 (@y_seven_s) February 7, 2020
ステップ脚で蹴り返しとるのがわかる
軸脚で作った水平面での回転のパワーを
ステップ脚で蹴り返す事で増幅させる#野球 #バッティング pic.twitter.com/HJK5MsgX1k
一連の動きの後半では,軸足の前方(投球ならキャッチャー,バッティングなら飛球方向)への反力はほとんど発生していません.
力の方向は身体の前面に向かっている事が分かります.
これは軸脚の股関節を,『開く』ように使って骨盤の回転を生み出していると言う事です.
股関節の外転・外旋・伸展の複合した運動です.
この動きで足が地面に固定されていれば,骨盤は水平方向へ回転しながら前方へ押し出される事になります.
限られたスペースで大きなパワーを生み出すには【股関節を三次元に使う】ことが最重要といえます.
さらにステップした側の床反力を見直すと,着地した時に矢印の長さが大きくなっている事が分かります.
これは軸脚で作られた水平方向での回転と骨盤の前方移動を,ステップ脚で増幅及び変換しているという事です.
投球でのイメージですが,ステップ脚で踏ん張るもしくはステップ側の骨盤を押し返す事で回転する力を増幅する事が出来ます.
この時にステップした側の膝が曲がったり,しっかり固定できずいわゆる『流れた』状態になると力が逃げてしまい,最大の力を発生する事が難しくなります.
ステップ脚のコントロールがとても大事で,ピッチングやスイングの力を生み出すキモと言えるでしょう.
さらにゴルフでは飛球線側の脚を力強く伸ばす方が飛距離が大きくなる事も分かっています.
野球のバッティングでも同様の知見があり,ステップした側の脚のコントロールが重要なことが確認されます.
まとめ
- ピッチング,バッティング,ゴルフスイングで球速や飛距離を向上させるパワーを求める場合,水平面での回転が重要
- 回転を生むには軸脚股関節の外転・外旋・伸展をしっかり使う
- さらにステップ脚をコントロールして力強く踏ん張ることで回転するパワーを増幅させる
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てーらー (日曜日, 08 3月 2020 14:14)
はじめまして。いつも興味深く読ませていただいております。
ピッチングは円運動とのことですが、例えば外野からのバックホームのように助走をつけて投げるときはやり投げのように縦の運動を意識した方がよいのでしょうか。
外野手ですが遠投時に球速が出ず困っています。
Sept Conditioning Lab.鈴木 (月曜日, 09 3月 2020 12:26)
てーらー さん
コメントありがとうございます!
助走をつけられる状況であれば縦方向のイメージが良いと思います.
ボールの球速に,助走の速度を上乗せする事が出来ます.
但し,タッチアップ時のような助走がごく短い場合は,ピッチングのように水平面での円運動を作り出す方が球速は大きくなると考えます.