3月18日 横浜浜銀ホールで行われた第9回スポーツメディスンフォーラムに参加してきました.
午前は肉離れについて,スポーツ経験者は分かると思いますが,肉離れは再発率が大きい病態です.
これはメディカル側でも指導者側でも重要で,治りきらない状態でプレーを再開してしまうというのが大きな問題で,如何に治ったという評価ができるかがポイントになります.
ランチョンセミナーを含む午後からのセッションは ‘投球障害’ についてでした.
こちらは,フォーラム② ‘投球障害’ のコラムになります.
肉離れを考え直す
肉離れというと,
- 「放っておいたら治る」
- 「大したことではない」
と考えがちではないですか?
実は肉離れでも手術しないとスポーツ復帰が難しいものもあります.
特にこの場合2週間以内の手術が望ましいとされ,
肉離れだと思って放っておくと取り返しのつかない事にもなりかねません.
また,肉離れの1/3は再発で繰り返してしまうおそれが大きいケガの一つです.
これは,肉離れに対する認識の‘甘さ’でしょう.
選手,コーチ,メディカル,それぞれが肉離れに対する認識を変える必要があります.
医学的に肉離れは,Ⅰ~Ⅲ度で分類されます.
大よそは以下のように分類されます.
- Ⅰ度:組織の損傷はあるが,連続性は保たれ断裂はない
- Ⅱ度:組織が損傷し部分的に断裂がある
- Ⅲ度:組織が損傷し,連続した部分のない完全な断裂
今までの分類はここまででしたがⅠ度をさらに3つに分類し,
さらに細分化されるようになっています.
特に分類がⅠ度であっても組織損傷の程度が大きいものは治癒が遅く再発の危険性が高く,
注意が必要としています.
他にも具体的に見過ごせない,肉離れはどういうものでしょう?
一つは筋肉と腱の移行部,つまり骨に近いところでの肉離れです.
ここで完全に断裂すると手術でないと治りません.
それも2週間以内に手術しないと,切れた筋肉や腱が変性しもとの筋力を発揮できない事にもなります.
骨に近いところでの肉離れで,痛みがひどかったり,内出血がひどい場合はMRIなどでしっかり確認する必要があります.
再発が多いのもしっかり肉離れが治りきっていない状態でプレーを再開することが理由の一つですが,
これもしっかり評価していから行う必要があります.
フォーラムではMRIで治ったことを確認してからプレー再開の許可を出すとしていました.
それほど確認が必要だということです.
肉離れの治療についてもいくつか紹介されていました.
- 微弱電流
- 高圧酸素療法
- 鍼灸治療
- 組織リリース
どれも効果があるとのことでしたが,科学的根拠が示されたのは高圧酸素療法のみで,
治癒の短縮期間もわずかなものでした.
なにより重要なのは,‘予防’のトレーニングです.
予防で重要なのは,動作フォームと伸張性の筋力トレーニングです.
動作フォームはパフォーマンスにも影響しますので非常に重要.
具体的にいち早く取り入れられるのは,走るときに振り出す足を前方に着かず,身体の真下に着くことです.
走るのが遅い人はこれを意識するだけでも,走行速度が改善します.
具体的に言うと,足を前方遠くに着くと重心を前方に移動させようと,お尻から太ももの裏の筋肉が強く働きます.
このときは,筋肉が伸びているためストレスが大きくなり,肉離れにつながるという訳です.
伸張性の筋力トレーニングは,再受傷のリスクも伴いますので厳重に行う必要があります.
テニス肘や,ジャンパー膝などの腱障害にも効果があると報告されていますが,
単純な筋力の改善や至適筋長の改善も得られ,トレーニングを続けることで再受傷の発生率も低下することが報告されています.
但し,損傷の多いとされる坐骨結節に付着する共同腱の筋実質である,大腿二頭筋長頭と半腱様筋は股関節を運動させるエクササイズで筋力の改善が示されているため,効果的なエクササイズを選ぶ必要があります.
肉離れと言って軽く考えるのではなく,どの部分がどの程度損傷しているかをしっかり評価した上,
スポーツに復帰する期間を判断する必要があります.
これは選手,指導者,メディカル全てのサイドで必要です.
専門家であるメディカルでも知識が充分拡がっている訳ではないので,
相互がしっかり情報を共有してリハビリテーションに取り組む必要があります.
石川県金沢市 スポーツと身体のケアなら
Sept. Conditioning Lab. 㐂楽
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