理学療法士・鍼灸師・JSPO公認アスレティックトレーナーの鈴木です.
今回のコラムは野球のバットスイングとゴルフスイングを比較します.
野球とゴルフでは似ているところと違うところがあり,それぞれの特徴を理解することでスイングを見直しやすくなります.
野球のスイングを見直したいという方やゴルフで思うような球が飛ばないと悩んでいる方もいます.
特に野球経験者でゴルフをされる方は,スイングのクセでスライスしてしまう方が多いのではないでしょうか?
ゴルフは巷で言われていることが多すぎて,何をしたらいいか分からないという人!
何故【スライス】してしまうのかという点についても解説していきますので,スコアアップにも繋がります!
初心者からスコア90を目指すゴルファーへのおススメ記事は☞よく分かるゴルフスイング~85切るまでならコレでいける~
野球のスイングとゴルフのスイングの共通点は??
最初の動画は,メジャーリーグのプホル選手とプロゴルファーのベン・ホーガン選手のスイングです.
まず野球とゴルフのスイングの共通点.
スイングの始動からテイクバックが終了し,身体の軸の回転を行います.
このとき【骨盤の回転】からスタートします.
右膝が前方に捻る前に,右股関節が回転を開始しています.
右股関節を外転・外旋することで骨盤の回転する力を生み出します.
膝から最初に動き出すと,‘重心を抜いた’ 動きになり充分にパワーを生み出せません.
*フィル・ミケルソン選手のスイング
↑のフィルミケルソン選手のスイングも同様です。
そしてインパクトまでの間にほとんど骨盤の回旋は終了し,
ベルトのバックルが前方,ボールの飛球線上を向いています.
頭部は骨盤の回旋が始まってからはほぼ一定の位置で固定されています.
肘は右股関節に近い位置を通って運動していることが分かります.
このようなスイング,実はタイガー・ウッズ選手の若い時期のスイングもほぼ同様なのです.
タイガー・ウッズ選手のインパクト(左16歳,右24歳時)
共通点として野球でもゴルフでも下半身を使った,『パワーを生み出す方略』はほぼ同じと考えられます.
つまり野球のスイングをそっくり変える必要はありません.
違う点さえ押さえれば,パワーを保って正確性を向上させることができます.
スイングでパワーを生み出すには→で解説しています.球速・飛距離アップ!野球,ゴルフなど決められた場所でパワーを生み出す方法
ゴルフと野球,スイングの違うトコロは??
それでは違う点はどのようなところでしょう??
使う道具が違うというのはもちろんです.
ゴルフクラブはクラブの軸からフェイスが出ているため,フェイスのコントロールが必要になります.
バッティングでも同じようなフェイス面を返す動きは行われています.
‘ローリング’という動作になりますが,これにより打球の飛距離は変わると言われています.
ゴルフと野球の違い:インパクト位置
まず大きくスイングに影響を与える点は,インパクトの位置です.
ゴルフは一般的に長いクラブの方が,ボールの位置が飛球線上前方になります.
しかし,一番長いドライバーでもインパクトはおおよそ骨盤の範囲内で収まっています.
しかし,野球のバッティングではインパクトの位置は体幹・骨盤より前方になります.
このインパクトの位置の違いが,右腕と左腕の使い方を変える必要があるため,ゴルフでスライスする大きな原因となります.
ゴルフと野球の違い:リストターン
プホル選手のインパクトの瞬間を見直してみましょう.
この角度から観ると左腕に対して右腕が下にあります.
左手の小指側から先行し,手首がまだ返っていない状態です.
野球ではインパクトの位置が身体より前方にあるため,このスイングで成立します.
しかしゴルフの場合,インパクトが手前になるため,野球のインパクトのような腕の位置関係だとフェイスが開いた状態になります.
ゴルフでいうと【振り遅れた】状態になります.
別の言い方をすると ‘手首が返っていない’ のです.
野球ではインパクト時に手首が返らず,フォロー時に返る形になりますが,
ゴルフはインパクト時に返ることが必要になります.
これが,野球経験者に多いスライスの原因の一つです.
これはホームランを打った時の筒香選手のスイングです.
インパクト後にフォローのタイミングでも手首は返っていません.
ウッズ選手のインパクトは,左手の甲側が先行している
ゴルフと野球の違い:つま先の向き
もう一点はインパクト時の左爪先の向きです.
バッティングとゴルフの性質の違いもあります.
・野球:方向性<パワー
・ゴルフ:パワー<方向性
のトレードオフ.
バッティングでは左爪先を開いて,さらに腰の回転方向へ力を生み出す方略と,ゴルフでは左爪先を閉じたまま,正確性を求める方略にスイングの差があります.
野球でもコンタクトヒッターのようにミート率を求める場合はステップした脚の爪先が閉じている事もありますね.
ゴルフの場合左脚を壁にして,‘軸を作る’ と言われますが,ベン・ホーガン選手を観る限り,膝を前に出し積極的に体重移動をしています.
その人それぞれに合ったスイングもありますので,自分に合うスイングを色々試してみる事も必要です.
ゴルフと野球の違い:骨盤と上部体幹の捻転差
骨盤と体幹の捻転差
— 鈴木7@リハビリ+鍼灸+トレーナーの人+農家 (@y_seven_s) February 14, 2020
これがパワーを生み出す方略の一つ
捻転差はピッチングが一番大きく、ゴルフスイング➡︎バッティングと続く
バッティングが小さい理由はリアクティブな動作やからと考えて良い
股関節から骨盤での運動が先んじている事が重要
pic.twitter.com/fEtw44EHBx
野球のバットスイングでは骨盤と上部体幹の捻転差は約20°ですが,ゴルフスイングでは捻転差は55°程度になります.
上のように野球に近いスイングフォームでも一見すると体が回転して良いスイングに見えますが,ボールはスライスしながら飛んでいるのが分かります.
上部体幹の捻転差が小さくクラブが出るタイミングが早いためアウトサイドインの軌道になり,前腕の回内外の動きが小さい為,フェースが閉じずにスライスして浮き上がるような球筋になります.
この捻転差が小さいスイングはゴルフの初級者にも多く,捻転差を作り出すことは上達が早くなるめの大きなポイントであると言えます.
野球経験者がゴルフスイングで注意したい点
ゴルフのスライスに困っている人は,左手の甲の延長でボールを叩くイメージを持ってみましょう.
手元が先行すると,左手の小指側の延長でボールを叩く形になります.
これでは手首が返らずフェイスが開いたままのインパクトになってしまいボールに右回転がかかりスライスの球筋になります.
タイガー・ウッズ選手のインパクトでは,前方から観たときに腕の高さがほぼ一致しています.
また手の甲が,飛球線上を向いており手首が返っていることが分かります.
厳密にはリード側の手首が【サムダウン】と呼ばれるように,親指を下に向けながらリストターンをする事が望ましいでしょう.
まずはこの点を意識してみましょう.
このサムダウンの動きは,左手首の掌屈と右手首の背屈で成立しますが,この動きはバッティングの【ローリング】を作りだす運動と同じです.
リストターンのありなしはありますが,手首の使い方としては近似しているところもあります.
【骨盤と上部体幹の捻転差】も重要です.
骨盤を回してから上部体幹や腕が体にまとわりつくように,後からクラブが出てくるよう大げさにイメージすると良いでしょう.
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TS (水曜日, 13 11月 2019 09:41)
テークバックですが 野球の場合は肩がスムースに回りますが ゴルフだと思うように行きません。固く 浅すぎるのです。
ゴルフの場合でも 野球のようなイメージで うまく回せたらと思っています。
有難うございました。
Sept. Conditioning Lab. (水曜日, 13 11月 2019 12:42)
T S さん
コメントありがとうございます.
テイクバック大きく取るのは難しいですね.
野球との違いがいくつかありまして,それが影響しているのだと思います.
①テイクバック自体の角度
野球では胸が後方(飛球線に対して)を向くまでのテイクバックが必要ではありません.
ゴルフは胸が後方を向く,つまり90°程度の回旋が必要ですので,最初はかなり窮屈です.
②股関節の自由度
骨盤の回旋は股関節の回旋の量で決まりますが,
野球の場合,前方の脚はステップするために動きますので骨盤が回転しやすいのです.
ゴルフは前方の足が上がる事があまり良いとされないので,骨盤が回転しにくくテイクバックが窮屈に感じます.
③回転軸の差
野球は回転軸がほぼ垂直になっていますが,ゴルフでは前傾姿勢が求められます.
前傾することで股関節屈曲角度が生じ,軸足股関節の内旋角度が減少する事で骨盤の回旋が小さくなりテイクバックがスムースにならない.
もう一つ,前傾した時,胸椎が曲がってしまうと体幹の回旋量が減るのでテイクバックが小さくなります.
④腕の状態
野球ではテイクバックで肘を厳密に伸ばすように求められません.
ゴルフでは肘を伸ばすためにスイング自身が窮屈になります.
通じて,野球では身体の使い方として自由度が大きいためテイクバックも行いやすい.
ゴルフはクラブヘッドを停止している小さいボールの一点に正確に戻す作業になるので,
自由度が小さく窮屈に感じる事が多くなります.
出来る対策として,
①胸椎の柔軟性を獲得するストレッチなど
②体幹前傾を股関節で行い,背骨(胸椎)はしっかり伸ばした状態を保つ
③股関節の回旋可動域を獲得するストレッチなど
があります.
参考になさってください.
機会があればこの辺りもまとめたいと思います.