生活リズムは健康・栄養管理だけでなく,病気の一次予防や重症化予防と治療にも活用されています.
健康管理の‘守護神’である生活リズムは一度形成されると,急激な環境変化があっても数日間は維持されると言われます.
1日徹夜をしても朝夕のリズムが大きく崩れることはありません.
しかし,不規則な生活を繰り返していると,体調を崩し健康力が減少します.
1日3食の規則正しいい食生活は健康を整える体内時計の維持に重要と言われます.
では,その健康管理に大切な生体リズムはどのように形成されているのでしょう??
経口摂取の重要性とホルモンリズム
動物実験では,毎日一定の時間帯に栄養を口から与えると,ホルモンの日内リズムが食事の時間に対応して発生します.
しかし,点滴のように血管からそれを与えると日内リズムがなくなってしまいます.
また,タンパク質を含まないエサであってもホルモンリズムは消えてしまいます.
このような実験から,ホルモンのリズムは,
- 口から規則正しく食事を摂ること
- タンパク質における必須アミノ酸が重要
と考えられます.
また,リズム形成には消化管にも役割があると言われます.
具体的には,必須アミノ酸の刺激を感知する,‘空腸’と言われる小腸の一部が重要と考えられています.
動物実験ではそうでしたが,人の場合はどうでしょう??
人に栄養素を連続的に投与し続けるグループと1日の内16時間のみ投与するグループでは,副腎皮質ホルモンのリズムに差があり,食事の周期がホルモン濃度のリズム形成に関わっていると考えられます.
体温のリズムにも影響があると言われています.
人の体温は,起きた直後から徐々に高くなり午後2時ころにピークとなり,睡眠時にもっとも低くなります.
活動や休息のリズムと連動しているのですね.
事実,身体能力や知的作業能力は体温リズムの影響を受け,肺活量や筋力は体温の高い夕方にピークとなることが知られています.
食べ物の消化や吸収は,食事の質や量だけでなく食事の食習慣によって消化酵素の分泌リズムが形成され,食事時刻を予知した胃腸の働きが活発になります.
胃腸の働きが弱くなる夕方より夜遅い時間帯に脂肪の多い食事に偏ると肥満になりやすくなると言われます.
夜食が肥ると言われるのはそういった理由もあるのですね.
エネルギーを蓄える話が主になりましたが,それでは消費との関係はどうでしょう??
1日に消費するエネルギーの大半は生命活動維持のための‘基礎代謝’で占められています.
さらには,日常生活での活動で消費されるものと食事に伴う熱産生がエネルギーとして使用されます.
食事による熱産生は,朝しっかり食事をとることで上昇しやすいという事実があります.
朝食をしっかり摂ることは,日内リズムの回復とともに低い状態のエネルギー代謝を上昇することができます.
反対に朝食を摂らないと,基礎代謝と体温の低下により
- 免疫力の低下
- 肥満の増加
すると言われています.
また,睡眠との関係により空腹感を促すグレリンの分泌が増えたり,食欲を抑えるレプチンの分泌が減ったりします.
身体のリズムを考えた食事が健康維持と生活習慣病の予防にも重要なのです.
栄養素や分泌されるホルモンも健康には影響しています.
多方面からの視点を持って食事管理に取り組みましょう.
このコラムは,加藤秀夫 他;健康と生活習慣病予防における時間栄養学の枠割.脂質栄養学 26,1.pp35-45,2017.を参考にしています.
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