呼吸という動作にも筋肉が関与しています.
腹筋や肋骨の周りの筋肉,横隔膜がそれにあたります.
これらの筋トレを行うことで運動に対してどういう良い影響があるのでしょうか??
実は呼吸機能と競技力の関係性を調べた研究は,20世紀後半までほとんど行われませんでした.
持久性の運動の限界を決めるのは心臓や血管系にあると考えられていたのです.
しかし,1980年頃から呼吸疲労がマラソンの結果に影響するということが分かってきました.
スポーツにおける呼吸の第1 の働きは,運動のエネルギーを確保するために大気中から空気を肺に取り込み,その中に含まれる酸素を活動筋へ供給し易くすること,あわせて不要になった二酸化炭素を体外に運び出すこと,になります.
第2 の働きは,呼吸の長い短い,浅い深い,速い遅い,止めるなどの肺の機能的特性を駆使して運動のリズムを形成し,力の発揮のタイミングやリズムを調節することです.
その2つの働きを考えると呼吸はすべてのスポーツに通じます.
呼吸筋を鍛えることはすべてのスポーツ競技者の生理的機能やパフォーマンスの向上に役立つでしょう.
それでは,呼吸筋が疲労するとどうして競技力に影響を及ぼすのでしょうか?
呼吸という動作自身にまずエネルギーが必要になります.
閉塞性肺疾患といわれる病気を持っている人は,呼吸がしにくく呼吸をするために1日500㎉以上ものエネルギーを使用すると言われています.
500㎉というと,おおよそ2時間半歩くより多いエネルギーです.
運動時の呼吸も安静時より多くのエネルギーが使われます.
また,呼吸筋の活動の高まりに応じて,呼吸筋への血流量や酸素供給量を多くするために,腕や脚への血流を制限してしまうことが考えられています.
つまり呼吸筋のトレーニングをすることで得られる効率的な呼吸が,腕や脚の筋肉への血流を維持し持久性のパフォーマンスが保たれるのです.
呼吸筋トレをすることでどのスポーツにどのような効果があったのかを見ていきましょう.
まずは持久性スポーツの代表格,長距離走です.
1日10分×2回のトレーニングを4週間行った結果,12分間走で10%程度距離が延びました.
水泳では,0.6~1.7%タイムに改善が得られています.
自転車スプリントでは,ピークパワーと平均パワーの改善,
サッカーでのYo-Yoテスト結果に改善があったと報告されており,短距離やスプリントを繰り返すサッカーやバスケットでも呼吸筋トレの恩恵があると言えます.
それではどういうトレーニングがあるのか??
一般的に用いられやすいのは,息を吐くときと吸うときに抵抗を加える方法です.
スパイロタイガーやパワーブリーズといった製品があります.
手ごろに行いやすいのは,マスクを付けたり風船を膨らませることも呼吸筋のトレーニングになります.
仰向けでお腹に置いた錘をお腹で持ち上げるように息を吸うこともリハビリでは行われていました.
持久系のスポーツでは,長めのトレーニングを行い,
瞬発系のスポーツでは,力強く呼吸をする意識で週に3回程度行うことが良いとされています.
呼吸筋トレの重要性を確認して,競技力向上を狙いましょう!!
このコラムは,
山地 啓司:呼吸筋トレーニングは呼吸機能やスポーツパフォーマンスを改善するか.体力科学;66,3.pp171-184(2017)を参考にしています
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