今,ダイエットに効果的な食事と言えば,必ず【糖質制限】【低糖質】という言葉が出てきます.
本当に,糖質を減らした食事は効果があるのか?一度考えてみましょう.
糖質制限でないと痩せないのか?
糖質を制限することは,身体に悪いこともあります.
特に妊娠後期での過ぎた糖質制限は問題です.
人の身体について考えて,食事内容も検討する必要がありますね.
糖質制限食は,食事摂取にともなう血糖上昇,それにともなう過剰なインスリン分泌を避ける食事療法といえます.
さらにたんぱく質と脂質の摂取は長期的には食欲を抑制するので,摂取エネルギー量を減少させる場合があります.
カロリー制限食および糖質制限食ともに,血糖上昇及びインスリン過剰分泌の回避,および肥満是正によるインスリン抵抗性改善を介した血糖値の安定化を目的とした食事であることを考えれば重要な方法です.
日本人の食事摂取基準(DRI)2015 年版は,人体に必要な糖質の最低必要量を100 g/日と推定しています.
低糖質ダイエットの先駆けともいえる,【Atkins’ diet】 は,炭水化物を制限開始から2 週間まで20 g~40 g/日で管理し,体内でのケトン産生量増加により減量効果を得る食事療法であり,日本での糖質制限の流行のきっかけとなったと言えるでしょう.
しかし,エネルギー源としてグルコースしか利用できない,脳や血球などの臓器によるエネルギー消費量は100-150 g /日であり,糖質の最低摂取量は脳に供給する糖質量に安全率を加味した150 g/日程度が妥当であり,‘最低糖質摂取量’として推奨されるべきと考える専門家もいます.
三大栄養素バランスの関係はどのように決められているのでしょう?
糖質量=総エネルギー量-たんぱく質量-脂質量として決定されます.
このため糖質を制限した場合,不足するエネルギーをたんぱく質と脂質で補うことで,高たんぱく質・高脂肪食とならないかをチェックする必要があります.タンパク質や脂質制限が必要な病気には注意が必要です.
また,妊娠末期の血中β ―ヒドロキシ酪酸レベルと児の知能が関係するという報告があり,妊婦への糖質制限食の適応は慎重に実施しなくてはならないとされています.
なぜ糖質制限食に効果があると考えられているのでしょう?
体重減少効果については,糖質の減少により過剰インスリン分泌を抑えること,たんぱく質と脂質の比率の上昇が食欲を抑えることで,結果として摂取エネルギーが減少することによると考えられます.
しかし,この場合,糖質を制限したおかげで全体の摂取カロリーが少なくなり,体重が減少した可能性もあります.
最近の研究で,肥満を有する成人を対象として,糖質制限食と脂質制限食を用いたグループで調査したものがあります.
糖質制限食摂取後は,脂肪酸化が高まるものの数日でその効果は減少しました.また,糖質酸化は大きく下がり続けました.
これに対して脂質制限食では脂肪酸化が低下することなく保持され,糖質酸化も維持されていました.
これは,脂質と糖質の酸化量の変化により,糖質制限食の方が体重は減るものの体脂肪の減少に乏しく,体たんぱく質が減少する傾向にあったということになります.
この論文の著者らは,6 ヶ月間の数学的シミュレーションでも脂質制限食が糖質制限食に対して体脂肪量の減少に優れることを示しています.
体タンパク質量の減少は,筋肉量が減っているということなので,基礎代謝の低下からリバウンドのしやすい身体になっていると言えます.
糖質制限食である必要はないということになります.特に体脂肪の減少を目的とした,【健康的な体重管理】で言えば,糖質制限食より,脂質制限食の方が良いのです.
次に糖質制限で生じるリスクについて考えます.
・食物繊維,ビタミン,ミネラルの不足が生じやすい.
・主食と比べて副菜は高価なため,食費が高額になる.
・糖質摂取比率と死亡率の関係では,糖質制限の割合が高まるほどすべての死因による死亡率が高いことが示されています.
・たんぱく質の過剰摂取で想定されるリスク
40 歳以下の健康な成人に1.9~2.2 g/ kg 体重/日のたんぱく質を一定期間摂取させると,インスリンの感受性低下などの好ましくない代謝変化が生じることが報告されています.
生物学的にはたんぱく質負荷は老化やインスリン抵抗性を引き起こすと考えられます.
アメリカの研究では,高たんぱく食摂取群では,がんから死亡までに期間が短縮しており,すべての年齢層で,糖尿病から死亡までの期間が短縮するなど,糖質制限してかわりに高たんぱく摂取を続けることで,かえって糖尿病リスクが上昇する可能性もあります.
・脂質の過剰摂取で想定されるリスク
糖質を制限することで,脂質のエネルギー比が大きくなりがちです.
糖質制限食は,中性脂肪低下とHDLコレステロール増加という好ましい効果を及ぼす反面,LDLコレステロールは少なくとも一過性に増加します.
・ケトン体の影響は?
糖質制限食は,血中のケトン体が多くなります.ケトン体は,長寿,代謝の健全化をもたらす可能性が期待されています.適度なケトン体の増加は長寿シグナルを高める可能性があります.
しかし,妊娠後期やアシドーシスをきたすレベルのケトーシスには気を付ける必要があります.
極端な糖質制限食は怒り,抑うつ,狼狽,気分障害をもたらします.
以上から考えると,現時点では,極端な糖質制限食は安全性の面からエネルギー制限食より効果的と言えません.安全性が確立するまでは,自己判断で不適切な糖質制限食を開始しないような啓発活動が重要であると考えられます.
糖質制限が必要というよりは,糖質を制限することで摂取するカロリー量が減少するため,ダイエットにつながるという事ですね.
リスクも考えると,極端な糖質の制限は控えた方がいいかもしれません.
全体にバランスよく,食事量を見直すことが一番ですね.
このコラムは,篁俊成:食事の糖質比率に対する考え方と課題. 糖尿病59(1):20~23,2016.を参考にしております.
石川県金沢市 スポーツ 身体のケア
Sept. Conditioning Lab. 㐂楽
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