子供の運動能力がどんどん低下していると言われています.では実際どのように変化しているのでしょう?その原因を考えるとどうすれば良いか??も見えてくるかも知れません.
石川県内で検証された論文があったので紹介します.
子供の運動能力(有酸素能力)と頭の良し悪し(認知課題)にも密接な関係があると言われ,子供の運動能力も大事です.
あと,この論文によると石川県は保育所普及率が全国トップクラス(H25年,全国2 位)だそうです.
全然しりませんでした,石川県の子供は恵まれているのかもしれませんね.
文部科学省は毎年,全国的な規模で児童・生徒の体力・運動能力検査を実施し,その結果を公表しています.1985年頃がピークとなり,1990 年以降,20 年間にわたって低下傾向が続き,低い水準にとどまっています.
都市化による遊び場の減少,少子化による遊び仲間の減少,自家用車や園バスによる送迎,テレビゲームの普及等により,幼児が体を動かす機会が減って,幼児の運動能力もかなり低下していることが予想されています.
幼児運動能力テストは,2013 年9-10 月に石川県の3 歳から6 歳までの33 園の保育所に通う保育園児2,329 名に行われました.
幼児運動能力テストの測定項目は
- 走・跳・投を代表する20 m 走
- 立ち幅跳び
- テニスボール投げ
の3 種目
文部科学省によれば,現在の児童は30年前より身長,体重とも増加があり体格は向上していると言えます.しかし,石川県での幼児の身長は0.5%,体重は2.2~4.3%低下していました.
近年では出生時体重と児童期の身体能力,例えば全身持久力や20m全力疾走時間等との関連を示す研究が報告されています.低体重出産の影響が幼児期,そして児童期にまで及んでいるなら問題であり,「適正体重の子どもの増加」への取り組みが一層強化されるべきと考えられています.
運動能力については全ての項目に低下していました.
20 m 走は特に4 歳以降で,立ち幅跳びは概ね全年齢で記録が低下していました.30 年前と比較し走・跳能力は明らかに低下していると判断していいでしょう.
20 m 走については3 歳児段階では30 年前と変わっていない事から,4 歳児以降の運動経験が影響していると考えられます.
【走る】事は,生まれながらにして習得される動作で,【投げる】事のような学習があって初めて成り立つ,つまり後天的に獲得される個体発生的な運動とは違います.
歩行と同様に,自然な活動を通して,自分にあった合理的な走り方を身につけていく部分が大きいと考えられます.本来遊びは自発的な活動であり,子どもなりの方法でその動きを身につけていくことが理想かもしれません.
しかし,疾走能力は2 歳から6歳までに著しく向上すると言われています.この時期に【走る】動作の習得につながる運動を遊びに取り入れることが大事でしょう.この論文中ではラダー運動や,鬼ごっこ等で真剣に追いかける,逃げるといった遊びが重要として紹介されています.
立ち幅跳びは筋パワー(瞬発力)および跳躍力の指標とされていますが,その動作に注目すると,着地の際の平衡性,反動をつける際の柔軟性,四肢の協応性も大きく関係しています.近年の幼児における立ち幅跳びの低下は,単に瞬発力の問題だけでなく,身体をうまく使えない事に起因している可能性があります.いわゆる【運動神経】が良くないということです.
ボール投げについては走・跳に比べ大幅に低下していました.
投動作の学習における至適時期が5 歳以前であるという報告がありますが,動作が未発達のままでいる幼児が以前に比べ多いようです.現代の日常生活において,投動作を使用する頻度は極めて少なく,投動作が未熟のままだと様々な運動の成就に困難が生じ,「運動嫌い」や「体育嫌い」が生じる可能性があるとしています.
このため,幼児期における投力の低下は楽観視できないと警告しています.
日々の遊びの中でボール投げの要素が含まれた遊びが少なくなっているのでしょう.
2012年のある報告によると,過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目は男子では1 位に「サッカー」が挙げられ,2011年6 位であった「野球」は上位10種目から外れる結果だったそうです.キャッチボール等の遊び体験が減少していると考えらえます.
幼児期の投能力向上や投動作獲得の際は,準備動作や回転動作など全身を大きく使った動作の含まれる運動遊びの実施が効果的であると報告されています.実際,,幼児の投動作における遠投距離と正確性を向上させるための指導プログラムを1ヶ月間導入した結果,著しい効果が認められたという報告もあります.
幼少期に,色んな遊びを通して様々な運動や動作を経験することが,子供の運動能力の向上に役立つのかもしれません.
ある時期に周りの子供と比べて運動が出来ないと,劣等感から運動が嫌いになり,さらに運動しなくなる.という悪循環になることもあるかも知れません.
運動能力が認知課題にも影響するという事は,日常の運動する機会も重要と思われます.
なにより,運動が好きで活発に活動してくれる元気な子供もいいですよね!
*このコラムは, 宮口 和義 他. 石川県における幼児の体格・基礎運動能力についての考察:1985年と2013年との比較 発育発達研究 2016;73:20-28 を元に作成しています
石川県金沢市 スポーツと身体のケア
Sept. 㐂楽
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