子供のころ,運動会などではだしで走ることありましたよね?
「はだし」の方が速い! なんて言いながら.
実際,はだしの方が速いんでしょうか?はだしで走るとどんないい事があるのでしょう?ランニングシューズの影響は?
子供が運動するのが得意になればいいな,と思っているお父さん,お母さんに是非!
一般的に人は 2 歳前後から走るようになり ,6〜7 歳には成人とほぼ同じように走ることが出来るといわれています.
走るとき,地面接しているの唯一の部分が足で,足と地面の接点は重要です.特に足の裏は感覚が敏感で地面の状態を感知するために感覚が進化したとされています.
現代的なランニングシューズは,足の裏の感覚を一部制限すると言われ,身体の運動能力の発達が著しい児童において,現代的なランニング シューズの着用が走動作の発達に悪 影響を及ぼしている可能性があると言われることもあります.
日本では,はだしが児童の健全な発育発達に 大きな役割を果たす可能性が示唆され,足のアーチの形成などに着目した多くの研究もあります.
今回紹介する論文では,年間 18 回,走, 跳,投の基本的な運動を行っている小学校 1 年 生〜6 年生 94 名(男子 51 名,女子 43 名)を対象として走り方とジャンプ力を検証しています.
走るときの足の着き方によって,パターンを3つに分類.
- 踵が最初に接 地する踵接地(RFS)
- 踵と母指球が同時に接地する中足部接地(MFS)
- 踵を降ろす前に母指球で接 地する前足部接地(FFS)
研究結果は以下です.一部表と数字に違う場所があり,誤りと思われることろを修正してあります.
文章はほぼ原文ママですので,分かりにくいと思いますので飛ばしてもらっても大丈夫です.
細かい部分も知りたい方だけ読んでください
下に要点しぼって書きます.
疾走速度を構 成する要素であるピッチおよびストライドに関し て,ピ ッ チ は,は だ し 条 件 が 4.11±0.37 Hz, シューズ条件が 3.98±0.34 Hz とはだし条件の方 が有意に高値を示した.一方ストライドは,はだ し条件が 1.34±0.20 m,シューズ条件が 1.42± 0.17 m であり,シューズ条件の方が有意に高値 を示した.
支持時間に関して,はだし条件が 0.139±0.017 s,シューズ条件が 0.148±0.017 s であり,はだしの方が有意に短かった. 疾走中の接地様式を分類したところ,接地様式 条件により大きく異なり,シューズ条件では全体 (94 名)の 82%の児童(77 名)が RFS,15%の児 童(14 名)が MFS,3%の児童(3 名)が FFS で あったのに対して,はだし条件では全体の 29%の 児童(27 名)が RFS,43%の児童(41 名)が MFS, 28%の児童(26 名)が FFS であった.
またシュー ズ条件で RFS であった全体(94 人)の 82%の児 童(77 人)に着目すると,はだし条件ではその内 の 68.8%の児童(53 人)が FFS・MFS へと変容 した.
はだしの方が速かった児童とシューズの方 が速かった児童の比較
はだし条件の方が疾走速度が高かった児童(以 下,はだし優位群)は全被験者の 38%(36 名), シューズ条件の方が疾走速度が高かった児童(以 下,シューズ優位群)は全被験者の 62%(58 名) であった.
シューズ着用時疾走速度は,はだし優位群が 5.56 ±0.60 m/s,シューズ優位群が 5.65±0.64 m/s であり,有意な差は認められなかった.はだし時 疾走速度は,はだし優位群が 5.73±0.61 m/s, シューズ優位群が 5.28±0.70 m/s であり,はだ し優位群の方が有意に低値を示した.RJ-index は,はだし優位群が 1.06±0.33 に対し,シューズ 優位群は 0.92±0.33 であり,はだし優位群の方 が有意に高値を示した.RJ の接地時間は,はだ し優位群が 0.18±0.04 sec に対し,シューズ優位 群は 0.20±0.06 sec であり,はだし優位群の方が 有意に低値を示した.CMJ の跳躍高は,はだし優 位群が 23.77±4.37 cm に対し,シューズ優位群 は 21.38±4.15 cm であり,はだし優位群の方が 有意に高値を示した.
走る速さは,ピッチ(時間内の歩数)とストライド(歩幅)で決まります.
シューズを脱ぎはだしで走ることによってピッチ が高まり,ストライドが小さくなりました.その理由の 1 つとして接地様式の違いが挙げられています.
シューズ条件で RFS であった全体の 82%の児童が,はだし条件 ではその内の 68.8%が FFS・MFS へ変わっています.接地様式が変わると接地時間が短くなりピッチが向上したと考えられます.
走る速さは,シューズを履く方が速い児童と,はだしの方が速い児童と両方ありました.
しかし,はだし条件の方が疾走速度が高かった児童は,ジャンプ力も大きいという結果になりました.
詳しい理由は省きますが,普段からはだし走を運動の中に取り入れることによって,FFS・MFS の接地様 式を自然と体得できる可能性があるだけでなく, 疾走能力・跳躍能力の向上が期待出来ることになります.
はだしで上手に走ることが,上手にジャンプすることと同様であるということです.
はだしの方が,地面からうける衝撃も少ない事も報告されており,足の痛みがある場合にもはだしで走ることの恩恵があるかもしれません.
現代の良い靴が,良い事ばかりではないようです.論文のなかでは,シューズを履いて過ごすことではだしで走ることが下手になる可能性についても述べられています.それはジャンプ力の低下にもつながりますね.
冒頭でも述べましたが,足の裏の感覚が重要であることも考えると,靴のインサート・インソールも充分考慮してから使用する必要があります.
子供たちが,上手に運動できるようになるにも色んな工夫が必要なようです.
*このコラムは,【水島 淳 他 .「はだし」が児童の疾走動作に及ぼす影響: 接地様式に着目して 発育発達研究 2016;73:13-19】を元にしております.
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