近年よく話題になるトランス脂肪酸.
とにかく健康によくない,と言われますが本当は何が悪いのでしょう.実際トランス脂肪酸てなんなの?というところから見てみます.
トランス脂肪酸以外の‘油’はどう影響するのかも重要ですね.
トランス脂肪酸ってどんなもの?
植物油はほとんどが,「不飽和脂肪酸」(オレイン酸,リノール酸,α‐リノレン酸)であるので常温で液体です.これに化学的に水素添加をすると「飽和脂肪酸」になりますが,これだと固すぎるので部分的に水素添加を行うと適度の柔らかさをもったものになります.
トランス脂肪酸が含まれている食品は?
現在は危険性が謳われていることもあり変化していますが,マーガリン,ショートニング,菓子類,ケーキ類,コーヒーのクリームなど多くの加工食品に含まれています.
他にも,反芻胃動物のバクテリアが不飽和脂肪酸の水素添加を行い少量のトランス脂肪酸が造られるため,牛や羊由来のバターなどでも少量のトランス脂肪酸が含まれます.
健康に対する影響は??
トランス脂肪酸を取り込ませた微生物を低温環境にするとDNA複製が止まり死滅する
必須脂肪酸代謝を阻害する
リノール酸代謝を抑制することが明らかになっています.ただリノール酸の必須量は全カロリー量の1%以下で,現在は必須量の数倍摂取されているため,脂肪酸代謝を障害するからという健康被害は考えなくて良さそうです.
心臓病の危険因子
トランス脂肪酸の摂取量と心疾患の関係を調査したものは様々あり,病気になる率が0.2倍~5倍以上と結果も様々で統計的処理の問題も指摘されています.また,ヨーロッパ9ヶ国での調査は,心疾患と脂肪組織のトランス酸含有量の間に相関はないとされています.
認知障害
65歳以上の調査でトランス脂肪酸摂取が多いと認知障害を引き起こす可能性が指摘されていますが,統計的に優位ではないようです.また,コレステロール,飽和脂肪酸などは神経細胞に入らないと考えられ,摂取したトランス脂肪酸が脳機能を障害することについては疑問がありそうです.
脳卒中を引き起こしやすいラットによる動物実験
ネズミに10%の油脂を含むエサを与えて生存率を調べた結果では,シソ油,亜麻仁油,魚油,ラード,バター,ラードなどに比べて,カノーラ(菜種)油,菜種(従来種)油,オリーブ油,高オレイン酸ひまわり・紅花油,月見草油,コーン油,水素添加大豆油,水素添加カノーラ油などは生存率を著しく減少した(40%前後)と報告されています.
この因子は臍帯血,母乳を通じて次世代に伝わると考えられ,親のエサの影響を受けて子の寿命が変わるとされています.
食用油,水素添加植物油には内分泌撹乱作用がある
オリーブ油とカノーラ油は心疾患の二次予防に効果的であると報告されていますが,脳卒中促進作用がありオリーブ油には台帳の化学発癌を促進するという報告もあります.
*本コラムは,「トランス脂肪酸(水素添加植物油)の何が悪いのか 奥山治美 他. 脂質栄養学 16,1 49-62.2007 を参考にしています
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