*ここでは右投げを前提としてあります.左投げは左右を反対に考えてください.
投球動作はスポーツをするうえで頻度の大きい動作です.特に野球のピッチャーは全力での投球を100球以上行うことも少なくありません.そのため肩を痛めたり肘を痛めたりすることが非常に多くなります.野球肩や野球肘と呼ばれるのもその数の多さのためでしょう.
一度の投球動作で肩や肘を痛めることはあまりありません.動作の繰り返しで少しずつ負担が重なり痛みが出るようになります.
- なぜ,肩や肘に痛みがでるのか?
一番に挙げられるのは投球フォームです.不適切な投球フォームで肩や肘に物理的なストレスがかかります.
投球はいくつかのフェイズに分けられ,フェイズごとにチェックポイントを作るとフォームを観察しやすくなります.
準備段階であるワインドアップからコッキング,ボールを加速させるアクセラレーション,ボールリリースからのフォロウスルー.フェイズの分け方は色々ありますがどのフェイズで痛みがあるかも重要です.
コッキングからアクセラレーションで多いのは,肩の捻りの切り替え時にストレスが肩や肘に加わることによる痛みです.コッキングでは一時的に身体に対してボールが後ろ向きに移動し,その直後前方への大きな加速が強制されます.この後ろ向きの速さと前方への加速の差が大きければ大きいほど肩や肘へのストレスが大きくなります.
具体的に観察しやすいのはワインドアップで挙げた左脚を着いた時点で,ボールを持った手が肩より上にあり前腕がまっすぐ上を向いている必要があります.
脚が着いた時点で手が肩より下にあると,ごく短い時間の間にボールが後ろ向きと前向きの動きをするため物理的なストレスが大きくなります.筋力を大きく発揮させるためにSS-C(ストレッチ・ショートニング‐サイクル)という考え方がありますが,それには大きすぎるストレスであると考えられます.
またボールを持ち上げる動作でも肩にストレスをかけることになり,肘を身体に対して大きく引きすぎるのはよくないとされます.それの方が身体を大きく使っているように見えますが,重要なのは身体を後方に捻ることであり腕を後ろに引くことではありません.右股関節と胸椎を使えば肘を両肩の延長線上にきます.
次にボールを加速させるフェイズでは,肘が充分前に出ていない状態で肩を捻る動作が問題になります.肘後ろ側に反る力が大きくなり肘の内側の靭帯が伸ばされたり外側の骨同士がぶつかり変形を起こしたりすることがあります.さらに肩の関節にも複数の力が働いた状態で捻るため痛みを生じます.ボールリリースまでの準備段階で,左股関節を使い右脚で地面を蹴った力を骨盤の左回転する力に変える必要があります.さらにその力を胴体に伝え左に捻ることで右肘が充分に前に出てきます.こうするとボールリリースのタイミングも遅くなりパフォーマンスアップも同時に見込めることになります.ボールを投げるというのが,‘胴体の真横で腕を前に倒すようにして投げる’イメージがありがちで肩や肘のストレスを大きくしている原因の一つでもあります.
ボールリリースからは,腕の振る方向,掌の向き,指の抜き方などから投球の問題が発見されます.
速いボールを投げられる理想のフォームと身体のストレスとならないフォームが同じかどうかは難しい問題ではありますが,身体の構造から考えると双方はおおよそ似通っています.また,速いボールを投げるに当たっては腕のだけの問題でなく下半身の使い方もあるので,腕の振りだけで考えるのではなく下半身・骨盤・胴体からも考える必要があります.
柔軟性・筋力・身体の使い方を見直しましょう.
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