膝が変形し痛みに悩まされている方は多いです.
しかし,変形があるから必ずしも痛い,訳ではないのです.
専門家の方も一度考え直してみましょう.
臨床でも膝の変形と痛みの度合いは必ずしも一致していないことがよく見られます.
整形外科の医師にうかがっても,「変形性膝関節症(膝OA)は,X線像にて手術適応が決定されることはない.
著しい膝変形にも関わらず,さほど辛そうでないこともよくある.」とのことでした.
では,膝の痛みはどこからきているのか?
そのような膝関節の変形と痛みのについて考えてみましょう.
書籍などを調べてみると,
- レントゲンにて膝関節の変形が見られても痛みを訴えるのは約半数であり,膝の痛みを訴えるもののX線である程度の変形を認めるのは15%程度である.
- 55歳以上の約50%は単純X線像の変化を認めるが,55歳以上人口の75%は特に機能障害を生じるような関節痛はない.
つまり膝の痛みがあってもレントゲン上変形があるのは少数であり,
レントゲンで変形があっても痛みがある人は多くないということです.
不思議な感じがしますね.ではその痛みはどこからきているのでしょう?
さらに,調べてみると・・・
少し難しい話ですが,なるべく正しい情報のために,
下まで読み飛ばしてもらっても構いません.
膝関節に痛みを発生する周辺組織としては,
1:関節の軟骨
通常を無神経・血管組織であるため,正常状態では疼痛を生じない.
しかし,関節軟骨が編成し表面が粗造化すると壊死した軟骨片が関節内に剥離しサイトカインが放出される.
これらが滑膜の1型細胞を活性化し滑膜炎を生じる.滑膜には多くの神経終末があり疼痛の原因となる.
2:腱・靭帯付着部
腱付着部には豊富な疼痛知覚の神経終末が存在する.
関節軟骨が編成し表面が粗造化すると軟骨の潤滑特性は低下する.
動き始めの関節のこわばり感や腱付着部の牽引痛となりえる.
3:滑膜
変形した関節の滑膜は活性化,肥厚増殖している.
炎症滑膜では神経終末の再構築,感受性亢進が生じており,水腫による張力や骨棘などの機械的刺激によって疼痛を生じる.
滑膜炎の原因が軟骨などの欠片である場合は,それがなくなれば滑膜炎が沈静化するため,
軟骨がほぼ完全に消失した末期の膝OAでは関節水腫や滑膜炎所見が乏しいこともありうる.
4:骨棘
感受性の亢進した滑膜を骨棘が刺激して疼痛を誘発する機序が考えられている.
5:半月板
関節軟骨に加わる荷重を分散する機能があるが,
荷重を受ける内側から中央部の半月板には神経終末や血管が存在しないため荷重で疼痛は生じがたい.
しかし,関節包に付着する外側部は神経,血管とも分布があり機械的刺激により激痛を生じる.
6:軟骨下骨および骨髄
軟骨下骨に対する機械的ストレスに応じて骨硬化を生じる.
しかし,骨リモデリングが不十分な場合やもとより骨脆弱性がある場合は軟骨下骨に骨折を生じ,疼痛を発生する.
まとめ
膝OAのX線像の変化は基本的に悪化する一方である.
しかし,X線には反映されにくい軟骨や半月などの病態は時々によって変化し,破壊と修復を繰り返している.
これが変形の程度を疼痛の間に解離を生じている理由と考えられる.
膝OAの病態をしっかり捉えて治療する必要がある.
そして,専門家の方により意識して欲しいのは
- フィードフォワード
なぜSLR程度の運動で症状が改善されるのか?
という事に疑問を持ってみましょう.
OAに対するアプローチの考え方が変わります.
もう一つは,
- 動的アラインメント
膝のみならず他の個所の痛みにも通じることですが,
動的なアラインメントが様々な原因を生み出している事が多々あります.
みなさん良く似た動的アライメントや動作方略を持っています.
観察してみましょう.
少し難しい言葉が沢山ありました.
膝のまわりがどういう構造であり,その構造により痛みの原因が違います.
つい変形しているから痛いと思いがちですが変形があっても痛みがなくなる可能性はあると思います.
変形があるからとか年齢だから仕方がないと考えている方はあきらめず,少し痛みはあるけど我慢できるからという方は今のうちに痛みや変形の予防も大事です.
数年後,数十年後の身体のことを考えてあげることも重要です.
膝の痛みのなぜ?をしっかり考えてアプローチする必要がありますね.
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